How My Heart Sings

ななほし、やほし、こころほし。

フェデリコ・モンポウは癒しの音楽ではないと思うな

フェデリコ・モンポウ(1893〜1987)はスペイン、カタルーニャ州バルセロナ出身の作曲家で、ピアノ曲や歌曲が有名。日本モンポウ協会 Amics del Frederic Mompou del Japó / Frederic Mompou Association of Japanを参照すると、スペイン語で Federico Mompou (フェデリコ・モンポウ)、カタルーニャ語で Frederic Mompou (フラダリック・ムンポウ)と読むそうだ。表記に揺れがあるのはそういうことなのか。

モンポウで検索していたら「スペインのサティ」とかいう売り文句がひっかかったんだけど…これは酷いな。サティに似ているところなんか…あー、「ジムノペディ」とかに似ていると言いたいのかな。うん、まあ。

そういえば…バブル後の日本で、癒しの音楽だとかどうとか、少しだけ持ち上げられたことがあるのを思い出した。というか、自分もそのクチだ。その頃、モンポウを聴いているとピアノを弾く友人に話したところ、笑われてしまった記憶がある。どうして笑ったのかは、教えてくれなかった。

 モンポウピアノ曲

 

 

Impresiones intimas: No. 7, Cuna

Impresiones intimas: No. 7, Cuna

試聴リンクはモンポウ自作自演です。スペインのエンサヨ、 Ensayo レーベルから出ていた原盤をブリリアントレーベルが買い取ったもの。1974年の録音とのことで、80才を超えての録音ということになる。

モンポウは1911年に、グラナドスに書いてもらったフォーレ宛の紹介状を手に、パリへ留学。一度目にパリで学んだ時期が1911年から1914年(第一次世界大戦勃発の年)なので、それはもうドビュッシーやらサティやらから大変に影響を受けた訳です。「内なる印象」から「悲しい鳥」「子守歌」を聴いてみてください。モンポウを評する際にありがちな言葉だけれど、繊細で内気で、集中する、沈潜する感じ。

モンポウの父親は鐘を造る職人で、そうした家庭で育ったことが作曲内容に影響を与えている、という論評があるけれど。実際にモンポウピアノ曲を聴くと、じーんと浸透するような響きが印象的で、それを鐘の音に喩えるのは詩的で良いなと思う。全身が共鳴するような深い響き。重い響きといっても良い。頭にがつんと、腹にずしんと来る。

…正直なところこの響きのせいで、自分にとって、モンポウというのは繊細で内気なのは確かにそうなんだけれど、かといって優男には聴こえないんだな。ぎゅーっと集中して、いつか刺してきそうな感じ。外見はひょろひょろなくせに、普段は静かなくせに、性根は怖い男。

モンポウのギター曲

Mompou, F.: Guitar Music

Mompou, F.: Guitar Music

  • Peter Fletcher
  • クラシック
  • ¥1500

 

Suite compostelana : I. Preludio

Suite compostelana : I. Preludio

  • Peter Fletcher
  • クラシック
  • ¥150

 

「コンポステーラ組曲」は、モンポウが1962年に発表した、オリジナルのギター曲です。全部で6曲、20分くらいと、けっこう大きな曲ですね。

ギターならピアノと違って、あの怖い響きはしないだろう…と思ったけれど、甘かったですね。音が小さくて靜かなせいか、ピアノよりもさらにぎゅーって、ぐぐーって、集中する感が強くてですね。

なお、このアルバムには「コンポステーラ組曲」の他に、演奏者の Peter Fletcher がモンポウピアノ曲「歌と踊り」をギター用に編曲したものが収録されていて、これもおすすめできる内容です。

まとめ

モンポウこわい。

…ここまで書いてきて、何か誤解を招くような表現があるようなので訂正…モンポウがこわいというのは、「恋すてふ」の壬生忠見みたいな感じでこわいということです。壬生忠見は歌合で平兼盛の「忍ぶれど」に負けてしまい、死後は化けて出るようになってしまった、という話しがありますが、そういう感じのこわさをモンポウの音楽から感じるという。六条御息所でも良いけどね。

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