優雅で湿っぽい「平尾貴四男 作品集」
平尾貴四男(ひらお きしお)(1907年〜1953年)は日本のクラシック作曲家。慶應義塾幼稚舎を経て慶應義塾大学医学部入学、その後文学部へ転籍して卒業。音楽は、陸軍軍学隊長の大沼哲(おおぬま さとる)に師事し、その後スコラ・カントルムとセザール・フランク音楽学校で学ぶ。
著名な弟子として、作曲家・シンセサイザー奏者の冨田勲がいます。慶應義塾大学文学部の後輩であること、二人共に音楽の専門教育を受けていないことなど、共通点があるからでしょうか。
平尾貴四男のCD
師の大沼哲もスコラ・カントルムでヴァンサン・ダンディに師事しているので、平尾貴四男も日本におけるフランス楽派の一人である。松平頼則と同い年なのだけれど、繋がりは無かったみたい?同時期の作品を聴き比べても、共通点があんまり…
…どの曲からも新古典主義的な明晰さ、額の秀でた感じを受ける。これは所属グループ全員に与えられる類のボーナスポイントっぽい。東洋趣味的響きが混るときがある。叙情的と言うか、もっと言うと愁嘆場的な響きが強くなるときが例えばヴァイオリン・ソナタ等であって、臭みとして感じるかも。
ここに挙げたアルバムで、オーケストラ曲以外の平尾貴四男の作品のかなりの部分が聴けてしまう。どれか選ぶなら、室内楽を収録した「平尾貴四男 作品集1」かピアノソナタやオーボエソナタ、ヴァイオリンソナタを収録した「平尾貴四男 作品集2」が良いと思う。
平尾貴四男の曲を実際に聴いてほしい
iTunes Storeで
CDの紹介だけで試聴できないのでは魅力を伝えられないなぁ…と思っていたら、平尾貴四男のアルバムで iTunes Store で買えるものがいくつかあったので、試聴リンクを貼っておきます。このアルバムは「ピアノ・ソナタ」「フルートとピアノのためのソナチネ」「ヴァイオリン・ソナタ」を収録したものです。それぞれ18分、8分、28分ほどの曲です。
試聴部分だけでも、どれも聴きごたえのある曲だというのが分ると思う。「フルートとピアノのためのソナチネ」「ヴァイオリン・ソナタ」は試聴部分がちょうど良い塩梅になっているので、フランス近代風の響きのピアノの上に、フルートやヴァイオリンがちょっと、あるいはかなり湿っぽい節まわしで歌い上げていく様を聴いてみてください。
Youtube で
平尾貴四男の動画といっても、ほとんどないですねぇ…たぶん、ここで紹介している四つだけだと思います。
一つめと二つめは「オーボエ・ソナタ」全曲です。オーボエによる導入、それに呼応するピアノ、和声はフランスっぽいんだけれど、すごい情緒的ですね。ゆっくりした楽章で特に強く匂う感じ。第3楽章は早いテンポの曲で「フランス帰りの作曲家感」満載です。
三つめ、これは平尾貴四男「ピアノ・ソナタ」より第3楽章の演奏です。ピティナのコンクールなので中身はともかく…
四つめの動画は平尾貴四男「管楽五重奏曲」全曲、演奏は洗足音楽大学の学生さんたちです。
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