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松平頼則「ピアノ曲撰集」を楽しむ

松平頼則(1907年生、2001年没)は日本の作曲家。名字の通り松平子爵家に連なるが、生家は本人が高校生のころ、大正年間に没落。親戚の援助で大学は慶應義塾大学仏文科へ。作曲は小松耕輔に学ぶ。師の小松耕輔1920年頃パリ音楽院に留学しヴァンサン・ダンディほかに師事していて、松平頼則も大きくは、日本におけるフランス楽派の一員である。曲名とか、フランス語で付けているやつが結構あるしな。

松平頼則は難しそうだけれど

Yoritsuné Matsudaïra: Selected Piano Works

Yoritsuné Matsudaïra: Selected Piano Works

  • 野平一郎
  • Modern Era
  • ¥1900

松平頼則と言えば、例えばウィキペディアでは雅楽と西欧の前衛音楽を結びつけた独自の境地とか紹介されていて、さてどんな大変なことが、と思って聴いてみると、呂旋法だ律旋法だって曲名が付いていても、流れてくる音楽は全然そんなことは無くて。作曲時期が初期の頃の曲が多いのも関係しているかも。

  1. 前奏曲 ニ調(1934)
  2. 前奏曲 ト調(1940)
  3. 6つの田園舞曲(1939 - 1945)
  4. リードI(呂旋法による)
  5. リードII(律旋法による)
  6. ピアノソナタ(1949)
  7. 6つの前奏曲 主題と変奏の形式による(1975)

 

前奏曲 ニ調

前奏曲 ニ調

  • 野平一郎
  • Modern Era
  • ¥200

 

6つの田園舞曲:I. Allegro

6つの田園舞曲:I. Allegro

  • 野平一郎
  • Modern Era
  • ¥200

 

リードⅠ(呂旋法による)

リードⅠ(呂旋法による)

  • 野平一郎
  • Modern Era
  • ¥200

 

 前衛作曲家の松平頼則の曲だから、と身構えると、一曲目二曲目「前奏曲」から肩透かし。…これはサティの、奇妙なタイトルが付いている曲っぽい?三曲目、「6つの田園舞曲」はプーランクにこんな曲があった感じ。「リード」は呂旋法だ律旋法だと曲名に付いているけれど、また曲はサティっぽい。どれもコンサートで弾かれたなら、普通に美しい曲だと感じると思う。

四曲目「ピアノソナタ」まで到っても、前衛的などという言葉は一切でてこない。でもって、習作っぽさもほとんど感じない。実に板についている感じ。

 

ピアノ・ソナタ:I. Allegro moderato

ピアノ・ソナタ:I. Allegro moderato

  • 野平一郎
  • Modern Era
  • ¥200

  

松平頼則の難しい曲

6つの前奏曲 主題と変奏の形式による:Prelude III

6つの前奏曲 主題と変奏の形式による:Prelude III

  • 野平一郎
  • Modern Era
  • ¥200

 

最後の「6つの前奏曲 主題と変奏の形式による」のみ前衛的な技法による、といっても怖くないです。いや、ちょっとは手強いかも。でも、綺麗な形をした音の連なりを楽しめるので大丈夫かな、とも思う。こういう曲でも、美しいと感じる曲とそうでない曲はあると思っていて、「6つの前奏曲 主題と変奏の形式による」は明らかに後者だ。

どの曲も、フォルムに関する扱いは正確で無闇に長大になったりせず、楽想はどれも香り高く、作曲の腕は確かで言うこと無し。日本人だけど理想的なフランス人作曲家って感じ。

以下はYoutubeにあった、代表作らしい「美しい日本」Piano Suite 'Le beau Japon’ の動画。

 

www.youtube.com

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