最近、ラグタイムというジャンルを集中的に聴いています。ラグタイムとは何か?1910年代当時は楽譜が大量に出版されたり、ピアノロールに大量に録音されたり、凄かったんだそうですよね。曲の特徴は…とりあえず、Wikipediaから引用してみる。…シンコペーションを多用した「右手」と、マーチに起因する「左手」。ふむふむ。
19世紀後半頃から、アフロ・アメリカン(おもに黒人)のミュージシャンが、主にピアノ演奏を中心に自らのルーツ音楽を基本とするシンコペーションを多用した(右手の)メロディーと、マーチに起因する(左手の)伴奏を癒合させた独特の演奏スタイルを編み出してゆき、これが従来のクラシック音楽のリズムとは違う「遅い・ずれた」リズムと思われたことから「ragged-time」略して「ragtime」と呼ばれるようになった、といわれている。(決定的な説では無い)
ラグタイムは20世紀初頭のアメリカで流行した。スコット・ジョプリンは、ラグタイム王と呼ばれ、ラグタイム時代において最も有名なアメリカ合衆国の演奏家・作曲家となった。ラグタイムは歌曲が中心であったことから、当時、短時間しか録音できなかったレコードやピアノロール、短時間しか再生できなかった自動ピアノなどに取り入れられ、アメリカの20世紀文明とともに急速に広まった。
自由な演奏を彷彿とさせる曲が多いが、クラシック音楽と同様に即興性はほとんど無く、キッチリと作曲されていて演奏も楽譜どおり正確に行われることが多い。
他にも、購入の参考にしようと思ってamazon.comのラグライムのCDに対する評価とか見てみると、度々炎上していたりする。わりかし皆さん五月蝿いことを書いていて「こんなのラグタイムじゃ無ぇ」「悪くはないが、こんな上品過ぎる演奏では…ラグタイムには酒場の喧騒みたいなものが必要なのだ」「ラグタイムをジャズと一緒にするな」みたいな。日本のアマゾンだと反応薄いし。
クラシックの側から
自分の立ち位置はクラシックの側です。ヴァイオリン奏者の端くれなので。クラシック側から見えるラグタイム、スコット・ジョプリン…子供のピアノ発表会で弾く子がいる。派手っぽいし楽しそうだしね。でも、楽し気に弾いているけれど、聴いていて楽しくは、あまり無いかな…曲が一本調子なんだよね。安定感や安心感はあるけどね。

- アーティスト: レヴァイン(ジェームズ),ジョプリン
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 2006/05/24
- メディア: CD
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ジョシュア・リフキン、ジェームズ・レヴァイン、これら二つのアルバムはどちらも、クラシックの奏者によるスコット・ジョプリンの定番です。例えばジェームズ・レヴァインはメトロポリタン歌劇場の芸術監督にしてピアノの腕前も超一流で、この録音だって技術も曲に対する理解度も非常に高いレベルの演奏なんだけど、一本調子にガンガンリズムを刻む左手は発表会の子達と比べてそんな変らないと思うんだ。根っこのところが同じというか。
ジャズの側から
次はラグタイムやスコット・ジョプリンをジャズの側から見てみます。試聴リンクのどちらも、ジャズの奏者による録音です。右手のシンコペーションの動きは強調されてぴちぴち跳ねるようです。左手は…左手のほうも負けていません。今にも跳ね出しそうです。
曲が一本調子ですって?とんでもない!曲によっては、どこへ行ってしまうか分らない気さえしますよ。クラシック奏者ですからわたし、自由過ぎても不安になります!…って、あれ?変なところに着地した。
ラグタイムの側から
スコット・ジョプリンが生きた時代に大流行したラグタイムですが、彼の死と時を同じくして一気に衰退していってしまいます。そしてその代わりにニューオーリンズ・ジャズが台頭してきて、即興性が重視されるジャズの時代になって…だが、彼等は滅亡してはいなかった!みたいな。Richard “Dick” Zimmerman(1937年生まれ)、William Albright(1944年生まれ)、二人のピアニストはいずれもラグタイムが流行した時期とは何十年も離れた生まれ。でも彼等の職業は ”ragtime performer” ”ragtimer” です。ラグタイマー。かっこいいですね。
バス声部は力強く明瞭に刻まれるけれど、同時に柔軟性をも兼ね備えていて、堅苦し過ぎない、かといって自由過ぎもしないちょうど良い塩梅。 五線紙に全てが書かれた音楽であること、即興性を重視するジャズと影響し合い混じり合って区別できなくなる音楽であること。微妙な立ち位置にある音楽ジャンル。
自分は、Richard “Dick” Zimmermanの録音のほうがより表情豊かで濃厚なので好みですが、録音が微妙にローファイで音が割れ気味なので、そこを気にする人がいるかも知れません。その場合は、William Albrightの録音がよりフィットするでしょう。どちらもおすすめの録音です。枚数が多いのが難点です。
番外編
クラシック側の演奏を批判してしまったけれど、例外はあります。…いや、これを挙げるのは反則かも。
これは、ヴァイオリンのイツァーク・パールマンと、ピアノのアンドレ・プレヴィンによる演奏で、大層楽しいものです。これの何が反則なのかというと、アンドレ・プレヴィンはクラシック音楽の世界で大指揮者ですが、ジャズ音楽の世界で大ピアニストでもあるからです。(ただし、ジャズといって分類的にはディキシーランド・ジャズですが…)パールマン+プレヴィンはクラシック+(ディキシーランドジャズ+クラシック)で、ちょうどラグタイムと似た感じの構成要素による演奏になって良い塩梅に。
まとめ
ラグタイムは、子供の発表会向けの曲では無く。ジャズに至る通過点、もう終った音楽でなく。今でも生きている、聴き応えのある音楽だ、ということでまとめ。
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