メキシコのショパンかシューマンかリストか、リカルド・カストロ
メキシコのクラシック作曲家で有名な人というと、誰を思い浮べるでしょうか?というかそもそも、誰か思い浮べることができますか?ブラジルのクラシック作曲家というなら、ヴィラ=ロボスがいますけど、さてメキシコですか…
ギター協奏曲がちょっと有名なマヌエル・ポンセでしょうか。グスターボ・ドゥダメルとシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラが「センセマヤ」を録音して有名になった、シルベストレ・レブエルタスでしょうか。さて後は…音楽史の本を読んだりすると、レブエルタスと同時代のカルロス・チャベスとか。
今回紹介するのは、これらの作曲家より以前の生まれのピアニストにして作曲家 Ricardo Castro、リカルド・カストロ(1864〜1907)です。wikipedia を見ると、フランツ・リスト風の名技的な曲を書いたとか何とか。
リカルド・カストロの生年、1864年頃というと、イギリス・フランス・スペインによるメキシコ出兵、ナポレオン三世がハプスブルク家のマクシミリアン一世を、傀儡政権であるメキシコ帝国の皇帝に即位させる等の歴史イベントがありました。
作曲家としてはどの辺りの世代なのでしょうか。まず、同国人のマヌエル・ポンセが1882年で20才近く下、シルベストレ・レブエルタスやカルロス・チャベスは1899年で35才下です。
同い年ならリヒャルト・シュトラウス。ドビュッシーやディーリアスが1962年、シベリウスやニールセンが1865年、サティが1866年の生まれです。…関係ありませんけど、こうして見るとドビュッシーって凄い新しいんですね。
リカルド・カストロはショパンかシューマンか
さて、ではリカルド・カストロはどんな曲を書いたのでしょうか。同名でショパンなんかを弾く現代のピアニストが居るので、ちょっと検索するのが面倒ですね。
見出しで既に答えっぽいものを書いてしまっていますが、iTunes Store の試聴リンクを聴いてみてください。「即興的ワルツ」「即興曲」等々、曲名からするとショパンっぽい名前の付け方です。
サロン音楽っぽい感じが強くて、上品で趣味が良くて。そういう意味で、ショパンかシューマンかと言えばショパン寄りでしょうかね。なお、メキシコの作曲家といってもメキシコ的なものはどこにも見当りません。
Youtube でみつけた動画、一つめはリカルド・カストロ「子守歌」、二つめは「ピアノ協奏曲」です。一つめの「子守歌」もロマンティックで素敵ですが、二つめのピアノ協奏曲が面白いです。雰囲気的にはシューマン辺りを彷彿とさせるもので、興味深いです。全曲でなく一部だけですが、視聴してみてください。ちょっと派手なシューマンみたいな感じ。
リカルド・カストロはシューマンかリストか
リカルド・カストロはフランツ・リストに似たところがあるよ、と書いていた wikipedia は何だったのでしょう。次は「ワルツ・カプリッチョ」「演奏会用練習曲」を聴いてみてください。今度は、どのような印象だったでしょうか?「ワルツ・カプリッチョ」は変態的名手シプリアン・カツァリスが弾いているせいか、フランツ・リストっぽいかも。
余談ですが、 この「ワルツ・カプリーチョ」を含むシプリアン・カツァリスのアルバム "Latin American Piano, Vol. 1" は、ほとんど名前を聞いたこともないようなラテンアメリカの作曲家のピアノ曲ばかりですが、どの曲もとても面白くて一気に聴いてしまうような楽しいアルバムですよ。なお、"Latin American Piano, Vol. 2" は無いっぽいです。
Youtube にリカルド・カストロの「ワルツ・カプリーチョ」の動画があったので、リンクを貼っておきます。この曲はiTunes Store でも複数のピアニストによる演奏を入手可能です。中々に技巧的で派手な曲ですね。これなら、フランツ・リスト風と言っても良いかもしれません?というか、うーん。シューマンっぽい情念というか、そんなものも感じます。
もう一つ、リカルド・カストロ「演奏会用練習曲第1番」「演奏会用練習曲第2番」の動画があったので、リンクを貼っておきます。カメラが安定しないのは最初だけなので、安心して続きを見てください。
まとめ
実は最初は、この Ricardo Castro、リカルド・カストロじゃなくてグアテマラの作曲家 Ricardo Castillo、リカルド・カスティージョって人の曲を検索していたんですけど、どこかの時点でスペルチェックかサジェストか何かが入って、いつのまにかこの人のほうを検索していたんです。結果的に面白い作曲家を知ることができて良かったです。
ショパンともシューマンともリストともつかぬ変な曲、という感じではなく、そりゃあ確かに突き抜けたものは無いんだけれど、とても良質の音楽だと思います。
この記事を書くにあたっては、中南米ピアノ音楽研究所のRicardo Castroのページを参考にしました。ありがとうございました。