アルテュール・スホーンデルヴィルトとアンサンブル・クリストフォリによるベートーヴェン
- アーティスト: Ludwig van Beethoven,Nachtmusique,Arthur Schoonderwoerd
- 出版社/メーカー: Alpha Productions
- 発売日: 2005/11/08
- メディア: CD
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Arthur SchoonderwoerdとEnsemble Cristoforiによるベートーヴェンピアノ協奏曲。全集になっている。この録音の特徴は同時代楽器を使用していることもあるけれど、何より各パートをほぼ一名ずつで弾いていることだ。これはどういう理屈かというと、本番の公開演奏前にロプコヴィツ侯爵邸で行なわれた試奏時の編成を想定して、ということらしい。
あ、ロプコヴィツ侯爵というのは、当時のベートーヴェンのパトロン、スポンサーです。ハイドンはこの貴族さまに「ロプコヴィツ四重奏曲」を献呈し、ベートーヴェンは「交響曲第3番」「交響曲第5番」「交響曲第6番」等々を献呈しています。当時、こうしたパトロネージュは普通にあったことです。この時代は、貴族さまに仕え、そこで才能を認められ、貴族さまが持っているオーケストラに自分の曲を弾いてもらう時代から、自立して有料で公開コンサートを開く時代への転換期でした。
この時期は、王侯貴族といった「古いお金持ち」と、これもハイドンが「トスト四重奏曲」を書いたヨハン・トストのような大商人の「新しいお金持ち」がおります。お金持ちの懐ろは探るもの。大きな編成の曲を公開演奏するにはいつの時代も同じ、場所代やらオーケストラの面子やらでお金がかかるからね。楽譜の売上、個人レッスンの収入だけじゃ足らないのです。お金持ちはお金を払って名誉を得る。ロプコヴィツ侯爵はみっつのお城にみっつとも別々のオーケストラを持っていて、芸術の保護者として高名だったそうです。そのせいで晩年は困窮したそうですが。
…このアルバムでは、ファースト・ヴァイオリンだってセカンド・ヴァイオリンだって一人です。ヴィオラとチェロは二人だったように書いてあったと思う。どうしてもディビジになる箇所でもあるのかしらん。特に「皇帝」の第1楽章の冒頭、ピアノ独奏の後に続くあの勇壮なテーマをヴァイオリン一挺で弾くところは本当に痺れる憧れる。自分が舞台で弾いているところを想像したりなんかしたら、アドレナリンが出まくる感じ。親密さより生々しさが勝る。