How My Heart Sings

ななほし、やほし、こころほし。

ラフマニノフは微妙な位置にいる作曲家

今日はロシアの大ピアニストにして大作曲家Sergei Rachmaninovセルゲイ・ラフマニノフ(1873〜1943)のお話しです。…大作曲家というのはちょっと違うかな…まず第一にピアニストですよね。2メートルを越す巨躯と、12度を掴める巨大な手。手が小さかったことで知られるアリシア・デ・ラローチャはやっと8度だったそうですが。どれだけ大きいんだ。

ラフマニノフといって、気に入ったアルバムというのは実はあまり無いのです。ラフマニノフの演奏というと、我を見よ、我はこんなに弾けるぞ!みたいにバリバリとガンガンと弾いていて何の旨味も無いものか、べたべた甘ったるいだけのものか、聴いているのが辛くなってくるようなかわいそうになってくるような、もっと向いている曲があるよ、って思ってしまうようなものしか聴いたことがなくて。ラフマニノフ自作自演は、だってさすがにノイズだらけだし。

そういう状況で、自分が気に入っているものを一つ挙げるとなると、第一にはアール・ワイルドが弾いたものになるかな、と思います。

ラフマニノフでおすすめの演奏そのいち、アール・ワイルド

Rachmaninov: Transcriptions de mélodies

Rachmaninov: Transcriptions de mélodies

 

アール・ワイルド(1915〜2010)はアメリカのピアニスト、作曲家。芸術家というよりショーマンといった風情。ガーシュインラフマニノフの録音が有名。作曲家というだけあって、録音には編曲ものも多い。

自分はこの人の録音の多くは iTunes Store で購入したので、さてリンクを貼ろうと思ったら…アール・ワイルドが多く録音していた Ivory Classics のアルバムが、全部消えてしまっていますね痴ね。

このアルバムは、アール・ワイルドがラフマニノフの歌曲をピアノ用に編曲したものです。全18トラックで1時間18分、一曲は長くても7分ていど。 ラフマニノフの歌曲はまったく知らないので原曲がどんな雰囲気か分らないけど、一曲だけ知っている曲「ヴォカリーズ」が入ってる。他にも、甘い旋律の数々が。

Youtube に、アール・ワイルドが演奏する「ヴォカリーズ」があったので、リンクしておきます。


Rachmaninoff-Wild - Vocalise for piano solo (with sheet music)

 

ラフマニノフの曲は若くてバリバリ弾ける人が良く演奏しているけれど、どれもあんまり…もちろん腕が立つ人でなきゃ悲惨だし、大きな音が出せないんじゃ貧弱、でも若造じゃ大抵甘ったるいか騒がしいだけ。微妙な位置の作曲家だなと思っています。アール・ワイルドの演奏はそのへんを全てクリアしていて、大変素晴しいですね。でもって、当時のアメリカの趣味を反映して、とても豪華な演奏をするし。

ちなみにこの録音で使用されているピアノは Baldwin (ボールドウィン)というアメリカのメーカーのものです。基本線は丸くて且つ豪華な音で、鍵盤の操作のし方によっては鋭い刺激的な音が出たりするらしくて、面白いです。違う音が出ないのなら、違う名前を名乗る資格がないですよね。最近のベヒシュタインとかはスタインウェイの後追いで、ブランド名を名乗る資格が無いですよね。

ラフマニノフでおすすめの演奏そのに、ホルヘ・ボレット

ラフマニノフの録音で若造じゃなくて、というならホルヘ・ボレットのアルバムもお薦め。豪華さはアール・ワイルドと比較して落るけれど、音色はこちらのほうが美しく感じます。

二人とも、高齢になってもそれほど腕は落ちていなくて、味わいは増している。とても良いです。じじいの演奏のほうが味わい深い。

 

Variations on a Theme of Chopin

Variations on a Theme of Chopin

 

Prélude in G sharp minor, Op.32, No.12

Prélude in G sharp minor, Op.32, No.12