ウラド・ペルルミュテールのショパン「練習曲」
ラヴェル弾きとして有名な Vlado Perlemuter、ヴラド・ペルルミュテール(1904〜2002)の演奏するショパン「練習曲」を聴いています。
ショパン自体は大人になってから聴き始めたので、青春と結び付いた思い出みたいなものは無いんですがそれでも好きな作曲家ではあるので、言いたいことはあったりします。特に「練習曲」については…ミスタッチが有ったとか無かったとか、何某はこの曲で2分を切ったとか曲を何分何秒で通過したとか何とかって、競技かよ。
正直なところ、ショパンの「練習曲」は作品10の第1番第2番第辺りでもうお腹いっぱいになるのですよ。ミスしちゃいけない感が強烈にする、ピリピリした雰囲気の曲が続くので。もちろん、第3番「別れの曲」で一息ついたら後は美味しい曲が続くんですけどね。
具体的にはポリーニとかポリーニとかポリーニとかの録音のことについて言っているわけです。「お前がポリーニを嫌いでも良いから、ポリーニのショパン「練習曲」だけは別格だから聴けよ」とか言われるんですけど、そもそもあれが音楽に聞こえないから言っているんだ。ついでに横山幸雄も。こっちは変に気持ち悪いしなを作るから余計にタチが悪い。
ペルルミュテールのショパン
Nimbus Records に録音された一連のシリーズは1970年代から1980年代のもので、ペルルミュテールは70代、80代ですね。ピアニストとしてで無くともかなりの高齢です。
だいぶお年を召してからの録音なので技術的には厳しいんですけど、この録音を聴くと、バリバリ弾けなくても手はあるんだ、と感じる。指の回転は衰えていてはっきりしない音符もたくさんあるし、強弱もあんまり付けられないし、でも、ちゃんと音楽として聴ける。
「練習曲Op.10第1番」「練習曲Op.10第2番」辺りはカリカリせず落ち着いて優雅に。「練習曲Op.25第10番『大洋のエチュード』」とか、轟音は出ないにしても貧弱には聞こえない。
ヴラド・ペルルミュテールのショパン録音は、自分が購入した当時はボックス仕様の廉価盤で出ていたと記憶しています。意識的にショパンを聴こうと思っていた訳でもなく、安かったからという程度の理由で何も考えず購入したものです。当然ちゃんと聴くこともなく温めてあったのですが、後になってこれを聴いたときは「当時の自分、グッジョブ!!」と思いました。
Youtube に、ペルルミュテールがショパン「練習曲Op.25第11番『木枯らし』」を弾いた動画があったので、リンクを貼っておきます。1964年の動画なので、Nimbus 盤より10年ほども古いことになります。Nimbus 盤より覇気のある演奏ですね。技術的には、もう既にちょっと怪しいかも。
おまけ、ショパン「練習曲」のおすすめ
アビー・サイモン
Abbey Simon 、アビー・サイモン(1922〜)はアメリカ合衆国のピアニスト。廉価版レーベルの VOX からラフマニノフの協奏曲、ラヴェル、ショパンの録音が出ています。自分は iTunes Store で買いました。特にショパンの録音はお気に入りになったので、普通に有名なピアニストだと思っていたんですけど、そうでも無いみたい?日本で知られていないだけ?
ピアノは、おそらくアメリカのピアノメーカー Baldwin を使用。Baldwin Piano アール・ワイルドのところでも書いたのだけれど、聴衆優先というか、ちゃんと楽しませてくれる姿勢を崩さないのが良いと思います。アビー・サイモンとアール・ワイルドは、活躍した時期や場所も似ているけれど、演奏の方針みたいなものが似ていると思います。
アール・ワイルド
Earl Wild 、アール・ワイルド(1915〜2010)はアメリカ合衆国のピアニストで作曲家。豪華な音を出すし情感豊かだし明るくてサービス精神旺盛だし深刻じゃないし、とても好きなピアニストです。19世紀的な考え方を引き継いでいるのと自身が作曲家であるのとで、楽譜通りに弾くことに頓着しない傾向があります。
Youtube の動画は「練習曲Op.25第2番」。音が悪くてちょっとツラいけれど、それでも割と自由に弾いていることは確認できると思います。
海老彰子
海老彰子(1953〜)、最近は浜松国際ピアノコンクールの審査委員長を務めるなどの活躍をされています。日本ではあまり見ない、というか自分の視野には入ってこないだけかも知れませんが、フランス系の流派に属するピアニストです。実演を聴けばタッチが軽くて浅いのですぐ分ります。ロシア系のピアニストの深くて重厚なタッチとは、まったく違う世界なので…
ショパン「練習曲Op.25」の10番から12番辺りでも、轟くような音、耳を聾するような音とは無縁の素軽い音で通り抜けますよ。
Youtube の動画は、1980年の第10回ショパン国際ピアノコンクールでの「練習曲Op.25 第6番」の演奏です。ダン・タイ・ソンが1位、タチアナ・シェバノワが2位だった年で、海老彰子は4位無しの5位。タッチが軽い浅いというのがどんなものか、ご覧ください。
小倉貴久子
浜松市楽器博物館所蔵の1830年製プレイエルを使用。A = 429Hzで、調律は微妙に低い。Youtube 等で聴けないのが残念だけれど、これは是非購入して聴いてみて欲しいです。
当時のプレイエルという楽器の特性というか、アクションが現代のピアノと比較して軽いせいで、現代のピアノで弾くと辛そうな曲もひらひらと弾いていくのがとても面白いですよ。「練習曲Op.25第1番『蝶々』」が特におすすめです。軽い軽い!!
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