リカルド・ラモーテ・デ・グリニョンと画集「ゴヤ大全」
つい最近、フランシスコ・デ・ゴヤの画集と、Jordi Masó、ホルディ・マソが弾いた、バルセロナ出身の Ricard Lamote de Grignon 、リカルド・ラモーテ・デ・グリニョン(1899〜1962)という作曲家のピアノ曲のCDを二枚買いました。最初は買い物記事のはずだったんですけど、だいぶ長くなりました…
発端、リカルド・ラモーテ・デ・グリニョンの「ゴヤ」
リカルド・ラモーテ・デ・グリニョンの ”Goya Six Unpleasant Pieces for 10 Soloists” というアルバムをたまたま聴いたのが、一連の買い物の発端です。このアルバムのジャケットには、ゴヤの版画 ”el de la Rollona” (乳母っ子)という作品が使われていますね。
…何というか、強烈にグロテスクなんですけど。気持ち悪いんですけど。変態?最初はゴヤの版画のタイトル「乳母っ子」というのを知らなかったので、女装したおっさん?なのかと思っていた。
アルバムのタイトルに ”Six Unpleasant Pieces for 10 Soloists” と付いています。これはリカルド・ラモーテ・デ・グリニョンの「ゴヤ」のことです。「十人のソリスト達のための、不愉快な、嫌な小品集」という感じかな。
このアルバムの冒頭に収録されている「ゴヤ」は1944年に作曲されたもので、全部で六つの部分に分れており、全曲で21分ほどの曲です。各々の楽章には全てゴヤの版画のタイトルが付けられています。日本語訳は画集「ゴヤ大全」から引っ張ってきました。
リンク先は各々のタイトルに対応する絵の、スペイン語版の Wikipedia です。実際に絵を見てみると分るけれど、程度の差こそあれ、どれも嫌な感じの絵ですね。そしてグリニョンの曲自体もゴヤの絵に負けず劣らず、奇妙でグロテスクで暗い響き。
- Goya(1944): I. Mala Noche(ひどい夜)
- Goya: II. ¡Que Viene el Coco!(ほら、お化けがくるよ!)
- Goya: III. el de la Rollona(乳母っ子)
- Goya: IV. Bellos Consejos(良きアドバイス)
- Goya: V. Se Repulen(おめかしっこ)
- Goya: VI. las Rinde el Sueño(睡魔が彼女たちを打ち負かす
リカルド・ラモーテ・デ・グリニョンの生涯における歴史的イベントとしては、以下のようなものがあります。国内外とも戦争続きですね。
- 1936年から1939年:スペイン内戦
- 1939年から1975年:フランコ体制
- 1939年から1945年:第二次世界大戦(スペインは枢軸国寄りの中立的立場を取る)
- 1946年:国連がフランコ体制を非民主的であるとして非難
「ゴヤ大全」
さきほどのリカルド・ラモーテ・デ・グリニョン「ゴヤ」の各楽章に付けられたタイトルの意味が知りたかったので、買ってきました。綺麗だけれど、凄い量です。ちょっとやそっとでは、見切れるものではないですね。
自分は iBooks Store で購入しましたが、kindle版とかもあります。サイズは217MBで、本を開いてからページをめくれるようになるまで、自分の環境では一分ほどかかりました。(MacBook Pro Retina, 15-inch, Early 2013 2.4 GHz Intel Core i7 16GB)
タイトルで検索できるのは良いとして、けっして見易くはないと思います。長い解説が入ると、絵自体がタイトルの次のページになってしまう場合があります。「裸のマハ」で検索してジャンプすると以下のような画面になって、お茶吹いた。確かに画面中央にいる人?は裸ですけど、この絵は「魔女達の饗宴」ですよね…というのさておき。
フランシスコ・デ・ゴヤ(1746〜1828)はスペインの画家。「裸のマハ」「着衣のマハ」等で有名。ペラペラと眺めていくと「魔女達の饗宴」とか出てきて、「あー、この絵ってゴヤの作品だったんだー」というものもいくつかありますね。生涯の内での大きな歴史的イベントとしては、以下のようなものがあります。戦争が続いていますね。国土は荒廃していたことでしょうね。
- 1789年:フランス革命
- 1793年から1796年:フランス革命戦争に敗北(対フランス共和国)
- 1805年:トラファルガーの海戦に敗北(フランス帝国と組んで、対イギリス)
- 1807年:フランス帝国、ナポレオンのスペイン侵攻を受ける(フェルナンド7世の廃位)
- 1808年から1814年:スペイン独立戦争(フランス帝国からの独立、フェルナンド7世の復位)
- 1820年から1822年:スペイン立憲革命(フェルナンド7世の廃位と復位)
ゴヤの油絵からはそうでもないけれど、自分はゴヤの版画から、どれも辛辣というか描く対象に対する皮肉な視線を感じました。リカルド・ラモーテ・デ・グリニョンがなぜ「ゴヤ」を題材に取り上げ、各曲にゴヤの版画のタイトルを付けたのか、分るような気がしました。
リカルド・ラモーテ・デ・グリニョンのピアノ曲、オーケストラ曲
…綺麗にまとめようと思ったのだけれど、リカルド・ラモーテ・デ・グリニョンのピアノ曲やオーケストラ曲を聴いてみると、そんな簡単な話しでもないのかも、と思い直しました。
ピアノ曲もオーケストラ曲も、擬古典的な響きのものが多くて…「ゴヤ」のほうが特別なのか分らない。ストラヴィンスキーみたく時期的に作風が色々だったりするんでしょうかね。 ”Quatre Petites Pastorals” は、レスピーギがグリーグ風のオーケストレーションで作曲しました、みたいな。
Ricard Lamote de Grignon: Obra Completa per a Piano
- アーティスト: Jordi Masó
- 出版社/メーカー: Anacrusi
- 発売日: 2012/11/10
- メディア: MP3 ダウンロード
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