20世紀の大発明、スティールドラムで奏でるジャズ
今日は、スティールドラムによるジャズを紹介します。奏者はスティールドラムの発祥の地にして本場、トリニタード・トバゴ出身の Rudy Smith、ルディ・スミスと、ニューヨーク出身の Andy Narell、アンディ・ナレルの二人です。というか、自分のライブラリでスティールドラムでジャズというの自体がこの二人だけです…。
この楽器はパン、スティールパン、スティールドラムと様々な名前で呼ばれます。Wikipediaによると、20世紀最後にして最大のアコースティック楽器発明、とまで言われているそうです。具体的には、ドラム缶の上の部分を凹ませ、音階を鳴らすことができるようにしたものです。現在は、一つで2オクターブ以上に渡る音域を演奏できるんだそうです。規模は違っても、子供のころにそんなことをして遊んだことがありませんか?缶って、叩く場所によって音が違いますよね。
スティールドラムってどんな音?
スティールドラムのイメージとはどんなものでしょうか?やはり、カリブのトロピカルな音楽で使用されているのをイメージするでしょうか。それとも、トリニダート・トバゴのフェスティバルで何十人もが一斉に演奏する大規模なスティールバンドの合奏を?試しに、Youtubeの動画を二つ見てみてください。というか二つ目の動画は、サムネイルが既に凄いことになっていますが…何人いるんでしょうね?
Under The Sea (Little Mermaid)
Exodus Steel Orchestra Panorama Semi Final 2013
二つ目の動画の迫力は凄いですね。腹に響きますね。陳腐な言葉ですけど、重厚かつ華麗な音の饗宴です。演奏しているほうの一体感は凄いでしょうね。でも、自分はこれに対して強い不満を持っているのです。
一つ目の動画は独奏なのでそんなことはありませんが、二つ目の動画の演奏はものすごい四角四面というか、縦ノリって言ったら良いんでしょうか、全然流れていかないというか。とても息苦しい。そりゃあこれだけの人数の打楽器の合奏なので、こういうノリになるのは仕方無いのかもしれないですけど…これは、音楽とは少し違うものなのではないか?
スティールドラムによるジャズ
Rudy Smith
ルディ・スミスの ”Time To Move On” の編成は、スティールドラム、ピアノ、ドラム、ベースです。ここでルディ・スミスが演奏している曲の多くは、いわゆるジャズのスタンダード曲です。演奏自体も、とてもストレートなジャズで、妙な音のする楽器だからといって、色物なわけではありません。
スティールドラムは有名なスタンダード曲を弾くのに、必要にして充分な表現力がある楽器であり、何の不足もありません。また、先程の大きなスティールバンドによる演奏で感じた不満は、ここでは感じませんでした。ここで、スティールドラムのソロは、自由です。
Andy Narell
ルディ・スミスの一枚きりでは寂しいので…アンディ・ナレルの "The Long Time Band" はスティールドラムの他にエレクトリック・ギター、シンセサイザー、ヴォーカル、ラテンっぽい打楽器群、それにたぶんリズムマシーン。
このアルバムは、ラテン的な味付けが強いものです。スティールドラムのトロピカルなイメージを損わないアレンジで、ジャズでなくフュージョンの類いだと思って聴けば、問題なく楽しめると思います。
他の電気を通した楽器に、音量で負けず、100%確実に絶対にスティールドラムであると分るわけで。そのことだけでも、20世紀最後にして最大のアコースティック楽器発明と呼ばれる資格があると思います。