今日聴いているのは、"The Original Trinidad Steel Band" という1960年頃に録音されたアルバムです。スティールバンドっていうくらいですから、スティールドラムを中心とした合奏ですね。スティールドラムっていうのはカリプソとか、トロピカルな音楽で良く使われる金属製の打楽器です。
スティールドラム、パン、スティールパン、様々な名前が付いているこの楽器はトリニタード・トバゴで20世紀になってから生れたものです。おおまかに、ドラム缶を凹ませて音階が出るようにしたものですね。いつ頃始まったのかもだいたい分っていて、1930年代の終わり頃だそうです。
この楽器については、以前に記事を書いたことがあります。このときはスティールドラムでジャズを演奏するアルバムを紹介しました。 今回はトリニタード・トバゴで良く行なわれる大人数での合奏、スティールバンドとかスティールオーケストラとかについて書きます。
スティールドラムのイメージってどんなもの?
動画のサムネイルに写っているのは「テナーパン」といって二つ一組で使う、スティールバンドの合奏におけるヴァイオリンのような位置付けのものです。2オクターブほどの音域を持ち、旋律を担当します。ピロピロ、ピコピコいう音色は、正にスティールドラムの印象そのものです。
サムネイルだけでも大人数ですが、後ろには低音部分を担当する「チェロパン」等がずらりと並んでいます。こういった、高音域から低音域まで同じ種類の楽器を揃えて大編成で演奏するのが、トリニタード・トバゴでの主流みたいです。途中まで記事を書いてきて何なんだけど、これはこれでトロピカルっぽさからは遠いような…
もう一つ、これは、世界三大カーニバルの一つ「トリニダードカーニバル」の目玉企画である、スティールバンドのコンテスト「パノラマ」の実況録音です。さきほどの動画と同様の雰囲気ですね。音楽というより組体操とかマスゲームとかっぽいです。あ、ちなみにリオ、ヴェネツィア、トリニタード・トバゴが三大カーニバルだそうですよ。
スティールドラム、始まりの音
以下の動画のタイトルは "Casablanca Steel Orchestra - Early Recordings (1947-1953)"Medley", "In A Calabash"" となっています。スティールドラムの起源は1930年代終り頃なので、動画のタイトルを信用するならスティールドラムが生れて10年経過していない頃の録音ということになります。
…大変興味深いですね。録音が極度に悪いことは仕方無いとして、この混沌とした感じ。耳障りな音。
さきほど紹介した "The Original Trinidad Steel Band" というアルバムは1960年頃の録音です。スティールドラムの起源は1930年代終り頃なので、約20年ほど経過していますね。試聴してみてください。最初の動画、さきほどの動画の演奏と比較して、どんな印象でしたか?
…うーん、録音のせいで高音域の楽器が聴こえないだけなのかも?
自分の手元には他に、"Steel Band" "The Native Steel Drum Band" ともに1957年頃の録音、"Bamboushay Steel Band" 1962年頃の録音、"The Caribbean: Trinidad - The Sound of the Sun" 1967年頃の録音、等がありました。どれも、最初の動画の演奏とはずいぶん異なる印象です。
どれも、テナーパンのクリアで抜けるような音がしません。金物をぶっ叩いている感じ、ノイズ成分がとても多くて耳障りにも感じます。 そんな広い音域を使っているようには聴こえませんね。音程感もかなり怪しいですし。…全体としてトロピカルな感じに聴こえるかというと…いやあ。エスニックな感じはあるとしても、ねぇ。
うーん、録音が悪いせいで高音域が聞き取れないだけなのかも知れないけど…楽器が発する音自体に凄いノイズが乗っているようにも聴こえるし。一つめの "Trinidad Castillane" とか特に、音が遠くてそのせいで凄い怪し気ですね。
まとめ
楽器が進化する方向としては当然なんですが、音域の拡大、ノイズ成分の除去などが行われたと想像します。そしてドラム缶を加工した楽器というその成り立ちからして、音程の正確さの追求とか。その結果がテナーパンとかなんじゃないかと考えています。演奏のマスゲーム化はまた別の話し。
スティールドラムが生れた直後のノイジーで混沌として怪し気な響き、自分は好きです。それが録音の具合から偶然生じたかも知れないものでも。です。