How My Heart Sings

ななほし、やほし、こころほし。

マーガレット・レン・タンが弾く、ジョン・ケージ「孤島の娘たち」

今聴いているのは、 "Daughters of the Lonsome Isle" っていうアルバムです。ジョン・ケージ(1912〜1992)の、プリペアード・ピアノ、トイ・ピアノ、ピアノのための作品を収録したもの。奏者は Margaret Leng Tan (マーガレット・レン・タン)。シンガポール出身で、ピアノフォルテ奏者のメルヴィル・タンはお兄さん。

プリペアード・ピアノとは

Daughters of the Lonesome Isle

Daughters of the Lonesome Isle

  • Margaret Leng Tan
  • クラシック
  • ¥1500

 

Bacchanale

Bacchanale

  • Margaret Leng Tan
  • クラシック
  • ¥150

 

説明しておかないといけない単語がいくつかあるな。プリペアード・ピアノっていうのは、ピアノの弦にボルトやら消しゴムやらを挟んで弾くやつだ。日本のコンサートホールでやったらたぶん、出入り禁止になる。事前にお伺いをたてたって無駄だ。許可は降りないだろう。楽器が痛むってね。

ピアノの弦に挟むものによって、まず音色が変る。例に挙げたようにボルトとかを挟めば金属質の音になるし、消しゴムを挟めば音の響きを止めてしまったみたいになるし。ものを挟む位置によって、鍵盤を押したときの音程も変化する。演奏を聴いたら、ピアノ+打楽器の合奏みたいな印象を受けると思う。実際、「打楽器たくさん使いたいけどモノも人手も置く場所も無いよ?」ってところから出てきた発想だ。上のリンクから「バッカナール」を聴いてみて欲しい。音程感のある音とそうでない音が混在しているのが分ると思う。

トイ・ピアノとは

トイ・ピアノっていうのは文字通り、おもちゃのピアノっていう意味だ。トイ・ピアノといっても大まかに二種類ある。ひとつがシェーンハット等海外メーカーの、ハンマーで金属片を叩いて音を出すやつ。もうひとつが河合楽器の、ハンマーで金属管を叩いて音を出すやつ。だいぶん音の感じが違います。ここで弾かれているのは前者。

Suite for a Toy Piano: 1

Suite for a Toy Piano: 1

  • Margaret Leng Tan
  • クラシック
  • ¥150

 

Suite for a Toy Piano: 5

Suite for a Toy Piano: 5

  • Margaret Leng Tan
  • クラシック
  • ¥150

 

www.youtube.com

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マーガレット・レン・タンは達人

このアルバムは、現代音楽だろうが偶然性の音楽だろうが、結局は奏者の腕前次第で全然別物になるんだということを教えてくれた。他の演奏ではだるくてつまらなと感じる曲でも、マーガレット・レン・タン大姐の手にかかればスピード感と緊張感あふれる良い曲に変貌する。自分は、先程の「バッカナール」を聴いて頭をブン殴られたような衝撃を受けた。これはロックだよ!!みたいな。

「トイ・ピアノのための組曲」も素晴しい。小さくて弾きにくいはずだけど、リズムは揺ぎなく刻まれ、速いパッセージも難無く通過していく。もちろん、曲自体にこの楽器を選んで曲を書いたんだよ、と思わせてくれるちからがあるんだけど。他の演奏ではたどたどしさや頼り無さが先にたってしまうところを、マーガレット・レン・タンの演奏からは、繊細で優し気な雰囲気が伝わってくる。

 マーガレット・レン・タンは、トイ・ピアノのヴィルトゥオーゾ、特別な境地に至った達人って呼ばれているそうです。これが大袈裟な物言いじゃないことは、演奏を聴けばすぐ分ると思う。