How My Heart Sings

ななほし、やほし、こころほし。

高橋アキのシューベルトのこと、弾いているベーゼンドルファーのこと

現代音楽専門の高橋アキさんがシューベルトの後期ソナタ?ということで一部で話題になった、はず。自分はダッシュで買いに行きました。一枚目は2007年、それ以降2009年、2012年、2014年、2016年という感じで発売されている。三枚目は、もう出ないと思ってた。 

第一集

2007年9月の発売、記念すべき第一集です。第一楽章と第二楽章ばかり長大でバランスが破綻している異形の「ピアノソナタ第21番 変ロ長調 D.960」と、花のように愛らしい「ピアノソナタ第13番 イ長調 D.664」を収録しています。wikipedia によると「静寂の21番」だそうですよ。

 

三重県立文化会館のベーゼンドルファーを使用。(ベーゼンドルファー|Bösendorfer)津駅の近く、山手のほうにこの建物が出来たとき自分の周囲では「要塞だ中世のお城だ」「修道院だ『薔薇の名前』だ」等々の感想が出ていたと記憶しています。夕日に照らされてる感じと、出来た当時、周囲に何にも無かったのとで、そのような印象を持ったのだと思います。

ベーゼンドルファーという楽器の特徴的な響きが非常に良く分る、良い録音だと思う。ブリュートナーBluthner ブリュートナー日本総代理店)が高音域のほうでターボが効いているのと反対に、低音域のほうでターボが効いていて、木質な感じで、かつゴンゴン鳴るような。そしてピアニッシモはどこまでも音量を絞れる感じ。

余談だけれど、ヤマハはどうしてベーゼンを傘下にしたんだろう?自分とこの楽器の重心が高いのをどうにかしたかったんでしょうかね。伝統が欲しかった?でももう百年ほども持っているやん。

音色としては、渋味のなかにほんのわずかな、でもクセのあるキツい甘味がある感じ(そりゃまあ、ある程度は調整でどうとでも変っちゃうんだけど)。人によっては蓮っ葉だとか形容する人もいる。甘くなきゃ楽器じゃ無くなるし。

楽器の音色も手伝ってか、あまり甘くなく落ち着いた演奏で、自分はとても好きです。地味とも言う。

第二集

2009年12月の発売、「ピアノソナタ第19番 ハ短調 D.958」「ピアノソナタ第20番 イ長調 D.959」を収録しています。これら二曲は「ピアノソナタ第21番 変ロ長調 D.960」と同じく1828年シューベルト死の年に書かれています。Wikipediaを読むと「暗い情熱の19番」「明るく平穏な20番」だそうですよ。

 

 iTunes Storeには上記の二枚しか無いみたい。置いてあるのは良いけどアルバム一枚1800円だし一曲250円だし、何でこういう中途半端なことをするかなぁ。カメラータ・トウキョウは企業努力が足りないんじゃないですかねぇ…こういうところに置いてあれば他と同等の値段だったら買う人もあるだろう。他の日本のレーベルも同様だよ。日本のレーベルのアルバムは高いのが多いよ。

第三集

2012年の発売。最初に書いたけれど、第二集が2009年発売だったので、続きはもう出ないと思っていました。

ピアノソナタ第17番 ニ長調 D.850」「幻想曲 ハ長調 『さすらい人』D.760」を収録。有名度から言って「さすらい人幻想曲」がタイトルに来るのは当然でしょう。でも、「ピアノソナタ第17番 ニ長調 D.850」も村上春樹が「海辺のカフカ」で取り上げたことで、そこそこ有名になったみたいです。

シューベルト:さすらい人幻想曲

シューベルト:さすらい人幻想曲

 

第四集

2014年の発売、渾名付きの有名曲「ピアノソナタ第18番 ト長調『幻想』D.894」と、ぎこちない?たどたどしい?習作っぽい?花のつぼみのような「ピアノソナタ第9番 ロ長調 D.575」を収録しています。

wikipedia によると「ピアノソナタ第18番 ト長調『幻想』D.894」はベートーヴェンの影響が強く、また冗長で演奏効果が薄いそうですよ。いや、シューベルトピアノソナタとか弦楽四重奏曲とか交響曲とか、どれもベートーヴェンの影響受けまくっているので…冗長というか無闇に長いのは、シューベルトらしさですよ、うん。

シューベルト:ピアノ・ソナタ D.894「幻想」&D.575

シューベルト:ピアノ・ソナタ D.894「幻想」&D.575

 

第五集

カメラータ・トウキョウから出ている高橋アキシューベルト、前作からまた一年半ほど空いて、シリーズ第五作が出ましたね。2016年4月の発売です。録音場所は変らず三重県立文化会館、使用楽器も変らずベーゼンドルファーです。なお録音は2013年10月5日〜6日と、2014年5月27日〜28日に行なわれています。

それにしても今回は、「ピアノソナタ第14番 イ短調 D.784」と「ピアノソナタ第16番 イ短調 D.845」を収録ということで、曲が凄い地味ですね。自分は一応シューベルトピアノ曲全集って持っていますけど、ここら辺りは聴かないままかも。

ライナーノートを読んでも、この先どうするのか書いていません。「即興曲集」辺りまで録音するんでしょうかね?ピアノソナタで残っているのは「第15番 ハ長調「レリーク」」くらいですか…渾名付きの有名曲だし、これを録音しないというのは無いだろうな…

シューベルト:ピアノ・ソナタ D. 784&845

シューベルト:ピアノ・ソナタ D. 784&845

 

高橋アキはどのようにシューベルトのことを思っているのか

Youtube に、高橋アキのコンサートプログラムが出ていました。2016年2月7日、東京オペラシティにて「第23回 朝日現代音楽賞 受賞記念 」ということだったそうです。このプログラムのメインがシューベルトの「ピアノソナタ第21番 変ロ長調 D.960」で…興味深い。

そこで演奏されたシューベルト以外の曲は、新作ばかりだったのかほとんど出てきませんでしたが、ルチアーノ・ベリオの "Wasserklavier" があったのでリンクを貼っておきます。三つめの動画は "Luftklavier" "Feuerklavier" "Wasserklavier" ってなっています。風のピアノ、火のピアノ、水のピアノ、くらいの意味でしょうか。珍しい、三つめの動画、ピアノはカワイですね。

www.youtube.com

 

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